2024年のブランド保護トレンド
新しい年が始まりました。2024年、ブランドには監視すべき新たなプラットフォーム、知っておくべき新たな模倣品の手口、そして世界各地で施行される新たな法律が待っています。

目次10
新しい年が始まりました。2024年、ブランドには監視すべき新たなプラットフォーム、知っておくべき新たな模倣品の手口、そして世界各地で施行される新たな法律が待っています。
2024年に注目すべき最も重要なトレンドと課題をまとめました。
トレンド1:ライブコマースの拡大
ライブ配信で製品を紹介して販売するライブコマースは、ECの大きなトレンドになりました。
インフルエンサーやSNSが好むこの形式は、ECとエンターテインメントのプラットフォームが融合した現在、特に相性のよい買い物体験を提供しています。
しかし、ブランドにとっては大きな課題でもあります。模倣品業者はこの手段を悪用して偽物を素早く紹介・販売するため、ブランドが追跡して知的財産権を行使するのが難しくなるからです。
ライブコンテンツはすぐに消えてしまううえ、こうしたプラットフォームでは新しいアカウントを簡単に作れるため、監視はさらに複雑になります。
トレンド2:デスクトップクローキング
デスクトップクローキングは、模倣品業者が検知を逃れ、申請された出品をプラットフォームに削除させないために使う巧妙な手口です。
ブランド保護チームがよく使うデスクトップのパソコンで閲覧する人には正規品を見せ、同時にモバイル端末のユーザーには模倣品を表示するというものです。この手口は、消費者とブランドの監視担当者とで、閲覧の行動や使うツールが異なることにつけ込んでいます。
ブランドにとっての課題は、複数の閲覧環境にまたがるこうした欺瞞的な手口を効果的に検知して対処できるよう監視の手法を適応させると同時に、提出する申請で侵害をはっきりと示し、説明できるようにすることです。
トレンド3:ディープフェイク
AIを使って本物そっくりの写真や動画を作るディープフェイクは、オンラインのブランド保護において懸念が高まっています。
ディープフェイクは近年、有名な俳優、ミュージシャン、政治家といった著名人になりすませることで、世間の大きな注目を集めてきました。
しかしいまや、ディープフェイクのリスクは企業にも広がっています。ディープフェイクの技術が進歩したことで、企業のリーダーやインフルエンサーの姿を驚くほど正確に再現できるようになりました。
ブランドへの影響は深刻です。顧客はだまされてフィッシング詐欺にあったり、模倣品を売るページに誘導されたり、名誉を傷つける偽情報を信じ込まされたりしています。
課題は、こうしたディープフェイクを見分けることだけではありません。ブランドのイメージを守り、その代表者の信頼性を保ち、同時にロイヤルな顧客の安全を守るための戦略を立てることも求められます。
トレンド4:TikTok Shop
TikTokは、動画SNSのアプリから、独自のECプラットフォームであるTikTok Shopを持つまでに進化しました。以前、模倣品業者がTikTokを使って模倣品を宣伝する手口を解説しましたが、いまでは偽物を見せることと売ることが、より直接的につながっています。
TikTok Shopでは、出品者が10億人を超えるユーザーからなる巨大なオーディエンスに、ほかのどこよりも速くリーチできます。エンターテインメントと買い物を融合させた独自の形式のため、ブランドが効果的に監視するのは特に難しく、本物と偽物を見分けるための専門的な戦略が必要です。
トレンド5:Temu
人気のオンラインマーケットプレイスとして台頭したTemuは、低価格戦略で大きな注目を集め、短期間で多くのユーザーを獲得しました。可能な限りの低価格で製品を提供することに注力するこのマーケットプレイスは、手頃さを装って模倣品がはびこりやすい環境を生んでいます。
ブランドにとっての課題は2つあります。安価な模倣品によって正規品の価値が下がらないようにすること、そして顧客を誤解させてブランドの評判を傷つけかねない模倣品の出品がないか、プラットフォームを継続的に監視することです。
Temuの攻撃的な価格政策は模倣品の温床となっており、ブランドには知的財産を守るため、特に注意深く、先回りして動くことが求められます。
トレンド6:Shein
Sheinはここ数年で、オンラインのファッション小売の分野で存在感のあるプレーヤーになりました。独自のファッションブランドとして創業したSheinは、いまではブランドとしても、サードパーティのマーケットプレイスとしても事業を展開しています。
Sheinの知財に対する緩い姿勢は、数多くの知財紛争を招いてきました。Uniqlo、Dr Martens、Levi’s、Ralph Laurenは、知財をめぐってSheinを訴えたファッションブランドのほんの一部です。ファッション業界ではコピー品の文化がますます広がっており、Sheinは今年もその流れを続けそうです。
Sheinのサードパーティのマーケットプレイスの登場は、正規のブランドにとって厄介な事態を意味します。他社の知財に対する姿勢が変わらなければ、2024年には模倣品がはびこることになるでしょう。
トレンド7:デジタルサービス法
EUのデジタルサービス法(DSA)は、欧州連合におけるオンラインサービスの規制のあり方を大きく見直すものです。知財侵害を含む有害なオンライン活動への対策を主な目的とし、デジタルプラットフォームに厳しい新たな要件を課しています。
DSAは、次のような変化を義務づけています。
- 知財侵害を含む違法なコンテンツを先回りして特定し、対処すること
- 侵害の申し立ての提出を簡素化すること
- コンテンツモデレーションの方針と申し立ての処理を開示すること
- プラットフォーム上の侵害出品者を追跡すること
つまり、オンラインサービスの提供者は、知的財産権の順守を高められるよう、こうした一連のコンテンツモデレーションと紛争解決の手続きを導入しなければなりません。この法律の要求を満たさないプラットフォームは、世界の年間売上高の最大6%の制裁を科される可能性があります。
ブランドオーナーと消費者は、立ち入り検査を行い、罰金やサービスの停止で違反を罰することができるデジタルサービス調整官(Digital Services Coordinators)の支援を受けられます。
トレンド8:SHOP SAFE法
米国で提案されているSHOP SAFE法は、模倣品の販売、特に健康や安全にリスクをもたらす模倣品に関するオンラインマーケットプレイスの責任を、大きく転換させる可能性があります。
この法案が成立すれば、SHOP SAFE法はマーケットプレイスに対し、出品者の審査と侵害品の削除により注意を払うよう求めることになります。ブランドは、コンプライアンスを確保し、この法律を活用して消費者の安全を高め、知財を守るために、プラットフォームと緊密に協力する必要があります。
この法律は、たとえ誤りがあっても、新たな要求を満たそうと努力するプラットフォームに、実質的に報いるものでもあります。法案は、プラットフォームに一連のモデレーションの管理を導入する動機を与え、次のことを示せる場合には、責任からの「セーフハーバー」を認めます。
- 出品者と出品の審査・確認に十分な努力を払ったこと
- 模倣品を繰り返し販売する出品者を処分するためのポリシーを導入したこと
- 消費者が購入時に出品者に関するすべての関連情報を得られるよう、手続きを整えたこと
SHOP SAFE法は、INFORM消費者法とともに昨年初めて提出されたもので、施行されれば米国における知財の保護はさらに強化されます。
トレンド9:中国の商標法改正
中国が提案している商標法の改正は、ブランドが中国国内で知財を守る方法に大きな影響を与えそうです。これらの改正は、商標権侵害と商標の悪用により効果的に対処することを目指しています。
改正は、商標法の主に3つの分野に焦点を当てています。
- 登録商標の使用義務を定め、5年ごとに使用の申告を求める
- 周知商標の保護を目的とした、希釈化防止の規定を導入する
- 悪意で出願された商標の登録と使用を禁止する
これらの改正によって、中国は知財の保護の枠組みを強化しています。中国はこれまで外国の知財をあまり尊重してこなかっただけに、このニュースはブランドにとって大きな前進となるはずです。これらの法律は、商標の先取り(スクワッティング)を減らし、既存の商標の尊重を徹底することで、中国の知財環境を改善する可能性が十分にあります。
これにより、悪意の登録にもとづく、オンラインの模倣品の申請に対する反論通知が減るかもしれません。商標の希釈化に関する法律は一般に大企業の知財を守るものですが、その恩恵は時間とともに広がり、あらゆる規模のブランドに及ぶ可能性があります。
トレンド10:損害回収
損害回収(Revenue Recovery)は、ブランドが模倣品業者から直接、金銭的な賠償を求められる、ブランド保護の重要な戦略になりました。これは、知財侵害を受け身で申請するやり方から、より先回りの、金銭面に焦点を当てたアプローチへの大きな転換を意味します。
このプログラムは、ブランド保護の取り組みに、次のようなより直接的な効果をもたらします。
- 損害賠償を求める法的措置:ブランドが模倣品のネットワークを法的に追及し、金銭的な損失を取り戻せます。
- 資産の凍結と没収:資金と現物の両方を対象とし、模倣品の製造・販売を断ち切ります。
損害回収は、ブランド保護の取り組みを測定可能にするだけでなく、支出に対する明確なプラスのROIももたらします。ブランドの評判の回復や売上の改善にとどまらず、模倣品業者に狙われた企業は、いまやお金がそのまま自社の口座に戻ってくるのを目にできるのです。
