商標の先願主義と先使用主義:2026年7月版ガイド
先願主義と先使用主義の商標制度をわかりやすく定義し、国別の一覧もまとめました(2026年7月)。

商標の出願がたった1日違うだけで、海外市場でブランドを自社のものにできるか、競合他社に完全に奪われるかが決まることがあります。商標を登録するうえで、自国と海外の法的な枠組みを理解することは、国内と海外のブランド保護にとって重要です。各国は「先願主義」と「先使用主義」の2つの制度のどちらかを採用しており、どちらの制度が適用されるかによって、商標の権利を得るのが、国の知財庁に最初に登録した者なのか、商取引で最初に商標を使い始めた者なのかが決まります。
要点:
- 中国、EU、英国といった先願主義の国では、最初に登録した者が勝ちます。先に使っていたことは法的な抗弁になりません。
- その直接の結果が商標の不正取得です。市場に参入する前に第三者に商標を登録され、費用のかかるブランド変更や訴訟を強いられます。
- USPTOは先使用主義の制度を採用しているため、先に商業的に使っていれば、先に出願した競合に異議を申し立てられます。ただし、全国的な優先権を得るには連邦登録が必要です。
- 先願主義の国にも例外があります。英国の「パッシングオフ」の法理は未登録の商標の保有者に限られた権利を認めているため、国ごとの調査が必要です。
- MarqVisionは、展開を決める前に対象市場での知的財産の衝突を特定する、無料の商標スキャンを提供しています。
先願主義の制度では、商標の権利は、知財庁に最初に商標を登録した個人や企業に与えられます。
逆に先使用主義の制度では、商取引で最初に商標を使った個人や企業がその知的財産の所有権を得ます。
先願主義の商標制度
この制度では、商標の権利は、適切な政府機関に最初に商標を出願した者に与えられます。
言い換えれば、商標庁への登録が所有権を決める主な要素です。優先されるのは出願日であり、商取引での実際の商標の使用ではありません。

別の企業がより長い期間その商標を使っていたとしても、先に出願に成功した者が商標の法的な権利を得る可能性が高くなります。
商標の不正取得とは、正当な権利者がその市場に参入する前に、先願主義の国で他のブランドの商標を登録する行為です。最もよく挙げられる例が中国です。外国のブランドが市場に参入しようとしたときに、自社の商標がすでに第三者に登録されていることに気づくという事態が繰り返し起きており、商標権侵害の法律と罰則にもとづく費用のかさむ対応か、ブランドの全面的な変更を迫られています。この弱点が生まれるのは、先願主義の制度が権利の正当性よりも登録の早さを優先するからです。悪質な業者にこの隙を突かれないよう、海外展開の計画が決まったら、市場参入の後ではなく、すぐに先願主義の市場で商標を出願すべきです。
先願主義を採用している国
先願主義の商標制度は、中国、EUの大半の国、英国など、世界の大半の国で採用されている方式だと広く考えられています。
先願主義の制度を採用している主な国の一覧は次のとおりです。
- アルゼンチン
- ブラジル
- コロンビア
- 中国
- 欧州連合
- フランス
- ドイツ
- インドネシア
- イタリア
- 日本
- メキシコ
- ナイジェリア
- ロシア
- スペイン
- 韓国
- トルコ
- 英国
先使用主義の商標制度
米国やカナダなどで採用されている先使用主義の商標制度は、権利を与えるときに、商取引での商標の実際の使用を優先します。
この制度では、事業のなかで商標を最も早くから継続的に使っていることを証明できる者が、通常その商標の権利を持ちます。法的な保護のためには商標庁への登録も依然として重要ですが、最初の使用日が大きな重みを持ちます。

ほかの誰かが先に商標を出願したとしても、先に使っていたことを根拠に、その出願に異議を申し立ててブランドを守れる場合があります。
先使用主義を採用している国
先使用主義の商標制度を商標保護の基盤としている国は先願主義より少ないものの、米国、カナダ、南アフリカなどの主要国が含まれます。
先使用主義の制度を採用している主な国の一覧は次のとおりです。
- カナダ
- オーストラリア
- デンマーク
- インド
- アイスランド
- アイルランド
- イスラエル
- マレーシア
- ニュージーランド
- 米国
- 南アフリカ
例外に注意
海外での成長に向けた商標の戦略を立てるときは、国によっては標準的な先願主義や先使用主義の制度に例外があることを認識しておくことが重要です。
たとえば英国では、「パッシングオフ」というコモンロー上の不法行為によって、未登録の商標の保有者に、登録された商標に対する一定の権利が認められています。そのため、英国は先願主義の国でありながら、先使用主義の制度に近い小さな例外を設けており、創業者は知的財産を法的に整える前に事業を始める柔軟性を得られます。
同じくスペインでも、商標権は通常、先願主義の制度のもとで正式な登録から生じます。しかし、スペインで未登録ながらよく知られた商標を持っている企業は、類似した商標の出願に異議を申し立てられる場合があります。つまり、スペインで事業を行う企業は、正式に登録していなくてもブランドの利益を守れるということです(2022年のガイダンスにもとづきます。コンプライアンスの判断をする前に、現在のスペインの商標法を確認してください)。
だからこそ、商標の登録を計画するブランドは、対象国の具体的な商標の規制と例外を調べる必要があります。対象国をしっかり調べることが、効果的で漏れのない商標保護の戦略を立てるのに欠かせません。
ブランドが押さえておくべきポイント
先願主義と先使用主義の商標制度の違いは、本質的には単純ですが、世界中のブランドの知財管理に非常に大きな影響を及ぼします。
どの国でどちらの制度が使われているかを知ることは、企業が知的財産のポートフォリオの構築と拡大に注力している場合にも、海外で成長しようとしている場合にも重要です。このテーマについては、ブランドの知的財産を守るためのガイドで詳しく取り上げています。実際、新しい市場に参入する前に海外で商標を登録するべき説得力のある理由があります。
ブランドが犯しうる最大の過ちは、ある国が先使用主義の商標制度を採用していると思い込み、商標の出願の準備をしないままその国で事業を始めることです。そうなると、ブランドの展開に巨額の資金を投じ、新しい地域に店舗を開き、マーケティングキャンペーンに多額の費用をかけたのに、横から現れた第三者に知的財産を先に登録されてしまうという、悪夢のような事態に陥りかねません。
これを避けるためのベストプラクティスは次のとおりです。
- 将来事業にとって重要になりうる地域の規制について、できる限りの調査をする。
- 事業を始める前に、先願主義の地域で知的財産を登録する。
- 衝突の可能性に備えて、そうした重要な地域での知的財産の登録を注意深く監視する。
要するに、情報を把握し、重要な対象国の法的要件に従うことで、ブランドは将来の知的財産の侵害を避け、海外での事業成長の土台を築けます。
よくある質問
USPTOは先願主義と先使用主義のどちらの制度を採用していますか。
USPTOは先使用主義の制度を採用しています。米国の商標権は、出願の先後ではなく、商取引での使用の先後にもとづきます。ただし、連邦登録の出願は依然として非常に重要です。全国的な優先権、所有権の法的な推定、より強力な権利行使の手段が得られるからです。また、TMとRの商標記号を理解することも、こうした権利を正しく使うための一部です。
先に使用していたのに、他者に先に商標を出願された場合はどうなりますか。
米国のような先使用主義の国では、商取引での自社の使用日のほうが早いことを証明して、その出願に異議を申し立てられます。ただし、商標の出願は出願順に審査されるため、後から出した自社の出願は、先の出願の決着がつくまで保留になることがあり、何年もかかり弁護士費用もかさむおそれがあります。最も安全なのは、できるだけ早く出願することです。
先願主義の国では、商標を横取りされることがありますか。
あります。中国やEUのような先願主義の国では、自社がすでに使っていても、第三者が先に自社の商標を合法的に登録できます。これは商標の不正取得と呼ばれる行為です。そのため、海外に展開するブランドは、市場参入の前か同時に、先願主義の市場で出願すべきです。
使用意思(ITU)に基づく商標出願とは何ですか。
米国では、使用意思(ITU)にもとづく出願によって、企業は商取引で使い始める前に商標を確保できます。これにより、先使用主義の国のブランドも出願日による優先権を得られ、2つの制度のあいだの隔たりを埋められます。出願人は、商標が正式に登録される前に実際の使用を証明する必要があります。
無料の商標スキャン
ブランドと知的財産を守ることは重要です。特に、中国のような地域で潜在的な脅威が生じうるグローバルな市場ではなおさらです。そのためMarqVisionは、国内外で知的財産のポートフォリオを広げたい企業に無料の商標スキャンを提供しています。
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- 商標を提出する:商標の詳細をお知らせください。これを分析の土台にします。独自のブランドアイデンティティには、しっかりした保護がふさわしいものです。
- 対象市場を選ぶ:知的財産を守りたい国を指定してください。複雑な各国の知的財産権制度への対応をサポートします。
- オンラインでの展開状況を共有する:最も正確なインサイトをお届けするため、ウェブサイトやSNSの情報を共有していただくことをおすすめします。これにより、デジタルのプラットフォーム上での商標の衝突の可能性を特定できます。
情報を提出していただいたら、専門スタッフのチームが綿密な分析を行い、商標のリスクの可能性を特定します。そのうえで、知財保護の戦略について十分な情報にもとづいた判断ができるよう、具体的な対策につながるインサイトをお届けします。
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