Z世代が広げた類似品(デュープ)トレンドと、ブランドの法的対応戦略2026
類似品(デュープ)トレンドが広がるなか、Lululemonの法的対応の事例から韓国の判例まで、ブランドがいま準備すべき保護戦略を紹介します。

目次6
類似品(デュープ):偽物ではなく、選択肢として
模倣品・類似品による世界の経済的損失は、2022年の約2,670億ドルから2026年には約3,500億ドルに増えると見込まれています(2026 ブランドインテリジェンスレポート:成長の構造を変える)。市場が大きくなるにつれ、「デュープ(dupe)」の消費も広がっています。もとは「duplicate(複製品)」から派生した言葉で、高価なブランドのデザインや機能をまねた安価な製品を指します。かつては「パチモン」や「偽物」という否定的なイメージが強かったものの、いまではむしろSNSを通じて消費者が自ら類似品をすすめ、購入する時代になりました。
特にZ世代を中心に、類似品を単なる安い代替品ではなく「賢い消費の選択」と見る視点が、SNSのコミュニティや消費者のレビュー全体で急速に広がっている様子がうかがえます。IMFの2026年世界経済見通しによると、世界の成長率が3.1%に減速し、インフレ率が4.4%に上昇して、消費者の実質的な購買力が下がったことも、このトレンドを後押ししました。TikTok、Instagram、YouTubeなどでは、「○○ブランドの正規品の代わりにこれを使ってみて」「100万ウォンの代わりに10万ウォンでゲット」といったコンテンツが日常的に消費されており、人気の類似品はオンラインコマースで品切れ騒ぎを起こすほどです。
このように、類似品はもはや違法の領域だけで扱われる問題ではありません。文化とトレンドへと変わった「類似品の消費」という現象は、企業がブランド戦略、流通戦略、そして法的対応の戦略を新たに見直す必要があることを示しています。
要点:
- 模倣品・類似品による経済的損失は、2026年に約3,500億ドルに達すると見込まれています(2026 ブランドインテリジェンスレポート:成長の構造を変える)。
- 類似品は商標を盗用しないため法的な判断が複雑で、トレードドレスの侵害や不正競争防止法の違反として争われることが多くあります。
- Lululemonは2025年6月、Costcoを相手にトレードドレスの侵害訴訟を起こし、該当製品の一部は販売中止になりました。
- 意匠権、商標権、トレードドレスを事前に登録しておくことが、紛争が起きたときの最も強力な法的根拠になります。
- MarqVisionは、類似品の検知から削除申請の完了まで、マーケットプレイスで平均12〜72時間以内に対応しています。
類似品トレンドの広がりが招いたブランド価値の低下

類似品は価格の面では消費者にとって魅力的な選択肢かもしれませんが、ブランドにとっては深刻な脅威として作用します。特にプレミアム、ラグジュアリー、デザイナーのブランドは、固有のデザイン、機能、ブランドイメージで製品の価値を説明してきたため、似た製品の流通はその価値を直接損ないかねません。
類似品の消費の広がりは、ブランドに次のような損失をもたらします。
正規品の価格に対する消費者の抵抗の増加
類似品が増えると、消費者は自然と「似ているのに、もっと安いのでは」と考えるようになります。そうなると正規品の価格がより高く感じられ、定価をそのまま維持するのが難しい状況へと変わっていきます。消費者の値引きの要求が増え、「この価格なら買わない」といった反応も増えかねません。ブランドが長い時間をかけて築いてきた価格政策が崩れるおそれがあります。
ブランドのアイデンティティの希薄化
正規品のデザイン、色、パッケージといった視覚的な要素は、ブランドのアイデンティティを示す重要な要素です。しかし、こうした要素を類似品がそのまままねると、消費者から見て「どこかで見たような」「あのブランドの製品に似ている」というように、ブランド間の境界があいまいになります。結局、ブランドならではの差別化のポイントが目立たなくなってしまいます。
ブランドの熱心なファンの離脱
ブランドを変わらず愛してくれる長年の顧客は、実は正規品の価値への信頼から製品を購入していることが多くあります。もし類似品が「悪くない品質」という評価を受け始めると、こうした顧客まで「これで十分なら、こっちでいい」と離れていきかねません。ブランドがもたらす情緒的な満足感よりも、価格に対する実用性のほうが魅力的に感じられることがあるからです。
模倣品や低品質の製品と混同されるリスク
消費者のなかには類似品と正規品を見分けられず、低品質の類似品を経験したあとで、ブランドそのものの信頼と価値が損なわれる場合もあります。「思ったより品質がいまいち」「素材がこれなんてがっかり」といったレビューは、実際には正規品ではなく類似品から生まれたものですが、消費者にとっては「あのブランドへの失望」として受け止められます。
特にSNS、コンテンツコマース、インフルエンサーマーケティングなどの「イメージ中心のチャネル」が主な流通手段になったいま、消費者の目に映るブランドの認識は、以前よりはるかに速く、簡単に損なわれかねません。
ついに法的措置を選んだグローバルブランド:Lululemon
この製品は高級ブランドHermèsの「バーキン」を連想させるデザインですが、価格はわずか$78です(Forbes、2024年12月)。Hermèsのバーキンの最低価格は約$9,000で、その1%にも満たない価格で似た製品を提供していることになります。
こうした事例は、ファッション・小物にとどまらず、スポーツウェア、ビューティーなど、さまざまな業界へと急速に広がっています。特に一部のブランドは、類似品の広がりを見過ごさず、法的対応に乗り出しています。その代表的な事例が、スポーツウェアブランドのLululemonです。Lululemonは2025年、米連邦地方裁判所にCostcoを相手取って訴訟を起こしました。その理由は、Costcoのプライベートブランドであるカークランド(Kirkland)やスパイダー(Spyder)などで販売されている一部の衣料品が、Lululemonの代表的な製品と「あまりにも似ていた」という点でした。
スキューバフーディー、ディファインジャケット、ABCパンツといったLululemonを象徴する製品ととてもよく似たシルエットとディテールを備えながら、価格はわずか$8〜$22と、定価の5分の1にも満たない水準でした。Lululemonはこれをトレードドレスの侵害とみなし、消費者の混乱を招き、ブランド固有の価値を損なっていることを根拠に、法的対応に乗り出しました。実際、訴訟のあと、該当製品の一部はCostcoのオンラインストアで販売が中止されました。
💡トレードドレスとは
トレードドレス(Trade dress)とは、商品やサービスの全体的な外観、デザイン、パッケージ、色、形、サイズ、雰囲気など、消費者が特定のブランドを認識できるようにする固有のイメージのことです。商標(Trademark)とは違い、ロゴや文字がなくても、全体的なデザインの要素で保護される知的財産権です。トレードドレスを根拠に模倣品に対応したほかの事例が気になる方は、「MSCHF(ミスチーフ)」の話もあわせてご覧ください。
Lululemonは過去にも、Peloton(2021年)、Calvin Klein(2012年)などを相手に、デザインの侵害をめぐる訴訟を起こしてきました。今回のCostcoとの訴訟も、類似品の広がりにブランドがどれほど敏感に反応しているかを示す代表的な事例です。
韓国の事例で見る、類似デザインの判決と論争
類似品(dupe)をめぐる法的紛争は、韓国でも実際に起きています。代表的な事例が、2015年のPlaynomore(プレイノーモア)とHermès(エルメス)の訴訟です。Playnomoreは、Hermèsのバーキンを連想させるデザインのバッグを発売し、これに対してHermèsは、自社固有のデザインを侵害しているとして訴訟を起こしました。裁判所は最終的にHermèsの主張を認め、この判決は、韓国でも類似デザインに対して法的な保護が可能であることを示す代表的な先例として残っています。
このほかにも、韓国の一部のインディーコスメブランドが、グローバルなラグジュアリーブランドの製品名、パッケージ、色などをまねた類似品を発売し、消費者のコミュニティで物議を醸したケースもあります。しかし、現行法ではデザインの類似性や不正競争防止法違反の有無を判断する基準があいまいな場合が多く、特許庁によるデザインの類似性の判断基準の具体化と、不正競争防止法の改正が求められています。また、国内外のブランドに対しては、法的リスク管理の必要性が強調されています。
Playnomoreの判決が残した最も重要な示唆は、「ブランドのデザインも法的な資産として登録し、管理すべきだ」ということです。当時Hermèsが訴訟で有利な立場に立てた背景には、長年にわたって積み重ねてきたデザインの登録と使用の実績がありました。一方、韓国の多くのブランドは製品の発売後にようやくデザインの登録を検討することが多く、事後の対応には限界が生じます。意匠権、商標権、トレードドレスを事前に体系的に確保しておくことが、紛争が起きたときの最も強力な法的根拠になります。
類似品の時代、ブランドが構築すべき保護戦略

いまのように、似た製品が単なる偽物にとどまらずひとつのトレンドのように消費される時代には、ブランドにとっても訴訟だけで対応するには限界があります。製品一つひとつを守るだけでなく、ブランド全体のアイデンティティと消費者の信頼を守るための戦略的なアプローチが欠かせません。
1. 意匠とトレードドレスの登録
製品の外観、パッケージ、ロゴなどのブランド知的財産を体系的に登録することが重要です。こうした要素をあらかじめ登録しておけば、似た製品が現れたときに、法的対応やプラットフォームへの申請の明確な根拠として活用でき、より効果的な措置をとれます。
2. SNSチャネルの監視体制の構築
SNS、ブログ、YouTubeで、自社ブランドが類似品とともに言及されていないか、似たマーケティングが行われていないかを継続的に監視する体制を整える必要があります。特に「○○ブランド風」「プチプラ版」といった表現は消費者の混乱を招きかねないため、早期の把握が重要です。このときBrand Intelligence Agentを活用すれば、EC全体のデータをリアルタイムで分析し、素早い意思決定に役立てられます。
3. プラットフォームへの対応プロセスの整備
Amazon、TikTok、Shopeeなど、ブランドの露出が多い主要なプラットフォームには、それぞれ独自の知財保護ポリシーと申請手続きがあります。必要な証拠資料や申請方法などを事前に把握し、社内の対応プロセスを整理しておけば、知財リスクが生じたときにはるかに速く対処できます。たとえばAmazonでは、ブランド登録(Amazon Brand Registry)によって侵害の申請を自動化でき、Meta(Instagram・Facebook)は知財侵害の申請ポータルを別に運営しています。プラットフォームによって認められる証拠の種類(商標登録証、意匠登録証、正規品の画像など)が異なるため、よく使うプラットフォームの申請フォームと必要書類を社内文書にまとめておくだけでも、対応のスピードを数日から数時間の水準にまで縮められます。
4. 正規品の認証と消費者への啓発の強化
正規品とは、単にロゴが付いた製品ではなく、ブランドの哲学と品質が込められた成果物です。この違いを消費者がよく認識できるよう、コンテンツ、キャンペーン、製品ページなどを通じて、正規品の価値とアイデンティティを自然に伝える取り組みもあわせて行う必要があります。具体的には、製品にQRコードやNFCタグを付けて消費者がすぐに正規品かどうかを確認できるようにする方法や、素材・製造工程・品質基準をSNSのコンテンツで伝えるストーリーテリングの戦略などが効果的です。消費者が「なぜ正規品を買うべきなのか」という問いに自ら答えを見つけられる環境をつくることが目標です。類似品がまねできないブランドならではの体験とサービスをはっきりと伝えるほど、価格競争ではなく、価値の競争で優位に立てます。
いま必要なのは、単なる対応ではなく、知財保護を軸にした体系的な戦略の設計です。MarqVisionは、模倣品の検知と遮断から知財ポートフォリオの構築までを支援するAIを活用したMarqVisionのブランド保護ソリューションで、ブランドの持続的な成長を支えます。MarqVisionの無料相談に申し込み、自社ブランドの類似品へのさらされ方を診断して、ブランドを強くする知財保護戦略をいますぐ始めてください。
FAQ
類似品(dupe)と模倣品は、法的にどう違って扱われるのですか。
模倣品は商標やロゴを無断で複製した明らかな商標法違反であり、プラットフォームへの申請や法的対応は比較的直接的です。類似品は商標を直接盗用せず、デザインや外観だけをまねるため、トレードドレスの侵害や不正競争防止法の違反として争われることが多く、事前に意匠権とトレードドレスを登録しておいたブランドが紛争で有利な立場に立てます。
LululemonがCostcoとの訴訟で、一般的な商標権ではなくトレードドレスを根拠にしたのはなぜですか。
Costcoの製品はLululemonのロゴや商標を使っていなかったため、商標権の侵害だけで対応するのは困難でした。トレードドレスはロゴがなくても製品の全体的なシルエット、色、デザインの要素で保護されるため、消費者の混乱を招いていることとブランド固有の価値を損なっていることを法的根拠として活用でき、実際に該当製品の一部は販売中止になりました。
類似品による被害が疑われるとき、ブランドはどんな順番で対応すべきですか。
まずは意匠権、商標権、トレードドレスの登録状況を確認し、法的根拠を確保することが先決です。そのうえで、Amazon、TikTok、Instagramなど主要なチャネルでの似た製品への言及や露出の状況を週単位で監視し、プラットフォームごとの申請要件と証拠書類を社内文書にまとめておけば、実際に侵害が起きたときの対応スピードを数日から数時間の水準にまで縮められます。
MarqVisionは、類似品や似たデザインの製品を検知してから、マーケットプレイスで削除されるまでどれくらいかかりますか。
MarqVisionは、検知、証拠の収集、削除申請、完了の確認という4つのステップで対応しており、マーケットプレイスでは平均12〜72時間以内に削除されます。ただし、商標を直接盗用していない類似品の場合は、トレードドレスや意匠権の登録の有無によって対応のスピードと成功率が変わるため、知的財産権の事前の登録が、対応のスピードを決める重要な変数になります。類似品は、単なる流行ではありません。消費者の価値観の変化とSNSを起点とした消費の広がりのなかで生まれた新しいトレンドであり、いまこの瞬間もブランドのアイデンティティと信頼を脅かしています。この変化に沈黙したり、対応が遅れたりすれば、正規品の価値は「価格」という一面的な基準で評価されるようになり、長い時間をかけて積み上げてきたマーケティング戦略とブランド資産も損なわれかねません。
