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削除中心の発想の終わり

AIがオンラインの侵害を加速させるなか、削除中心の従来のブランド保護は終わりのない軍拡競争になりつつあります。その経緯と、ブランドのリーダーがガバナンス、可視性、長期的なブランドの健全性へ軸足を移すべき理由を検証します。

Charlie Abrahams4分で読めます
目次2
  1. オンラインの課題
  2. 結論

20年以上にわたって、オンラインのブランド保護は、それが止めようとする脅威と歩調を合わせて進化してきました。模倣品業者がオンラインに移ると、検知ツールはより高度になりました。権利行使が向上すると、侵害者は適応しました。技術が進歩するたびに、双方のハードルが上がってきたのです。

以下は予測ではありません。仕組みの内側からの観察です。

この分析では、ブランド保護がどのようにして現在の状態、つまり検知、削除、大規模な活動に焦点を当てた、高度に最適化されたAI主導のエコシステムにたどり着いたのかを見ていきます。そうした能力がなぜ重要だったのか、それがどのようにして当たり前のものになったのか、そしてなぜ人工知能がそのサイクルを劇的に加速させたのかを説明します。

しかし同時に、より厳しい真実も浮かび上がらせます。

保護が軍拡競争になると、進歩はコントロール、信頼、長期的なブランドの健全性ではなく、スピードと量で測られるようになります。その結果、業界は毎年速く動くようになる一方で、ブランドのリーダーは同じ問いを抱えたままです。私たちは本当に以前より安全になったのだろうか、と。

この記事では、私たちがどのようにしてここに至ったのか、そしてなぜ今、AI主導の世界で「保護」が本当に何を意味するのかを見直す必要があるのかを検証します。

20年近くブランド保護に携わってきたなかで、私たちは知的財産を守るためにテクノロジーが使われる多くの例を見てきました。市場の摘発、入国地点での税関の検査、サプライチェーンの物理的な調査といった、完全に物理的なプロセスの連続だった時代でさえ、テクノロジーは対策の中心にありました。ラベル、パッケージ、ホログラム、インクなど、さまざまな手法が、権利者が知的財産を守るために使われてきました。

いずれも侵害者の仕事を難しくしましたが、どれひとつとして、あるいはすべてを合わせても、「特効薬」にはなりませんでした。複製の技術はパッケージや印刷の多くのハードルを乗り越え、正規品のパッケージの廃棄物まで再利用され、ホログラムも複製されました。要するに、本気の模倣品業者は執念深く、いくつかの障害を置かれたくらいでは簡単にあきらめないということです。

オンラインの課題

2007年、私はミラノで開かれた模倣品対策の会議に参加しました。世界的に有名なファッションハウスが大勢集まっており、中心的な議論は、先に述べたような物理的な問題とその対策ばかりでした。

オンラインの偽物の可能性について、こうした企業がどのような検討をしているのかを尋ねると、その話題は退けられました。「お客様は私たちの美しい店舗で製品を買いたいと思っている。オンラインは関係ない」というのが答えでした。それから世界はなんと変わったことでしょう。

デジタルコマースは急拡大し、オンラインの売上の伸びとともに、インターネット上での模倣品の販売への認識が高まり、OBP(オンラインブランド保護)のベンダーが急成長しました。そして5年後、そうした企業の多くが、MarkMonitorでの私の顧客になっていました。

オンラインでの模倣品の販売が急増するなかで、課題は侵害している出品やウェブサイトを見つけて削除することにありました。そのため、クローラーとスキャンの技術が、今では世界で10億ドル近い規模に成長したオンラインブランド保護業界を支える中核的な資産になったのです。

「軍拡競争」とは何を指すのか

スポーツには「競争は終わりのないレースだ」という言葉があり、それはビジネスにも当てはまります。サーバーの技術、ソフトウェアのソリューション、チップ、さらにはAIエージェントそのものまで、ある市場で競合するベンダーがどう振る舞うかを見ればわかります。

私はよくこう言ってきました。たとえば、本気の模倣品業者が偽のブランド物の革製品で倉庫をいっぱいにしているとき、eBay、Amazon、AliExpressから彼らの出品とアカウントをすべて削除したら、彼らはそれを燃やしてしまうでしょうか。もちろん、そんなことはしません。

彼らは検索されやすい言葉を避けるように出品を調整し、新しいアカウントをつくり、Segundamano、Allegro、Coupangといったほかのマーケットプレイスに移るでしょう。あるいは、FacebookやTikTok ShopのようなSNSで販売するように戦略を変えるかもしれません。

要するに、彼らの多くは本気の大規模な業者であり、正当な企業と同じように課題に対応します。より賢くなり、より機敏になり、最良のオンラインビジネスと同じようにテクノロジーを使うのです。

巧みなキーワードの操作、問い合わせ元のIPアドレスやデバイスの種類によって異なるコンテンツを表示する高度なクローキングの手法、クローリングでは簡単に見つからない招待制のグループへの隠しリンクを含むインフルエンサーの動画、検索アルゴリズムで出品を上位に押し上げるボットによるトラフィック。これらはすべて、ブランド保護の技術そのものが向上した世界で、侵害者が検知を逃れて競争するためにどう進化してきたかを示す例です。

AIは状況にどう影響しているのか

金融市場、エンターテインメント、雇用の未来、あるいは日々の問題解決のどれについて話すにせよ、この1年でAIが最も注目を集めた話題のひとつであることは間違いありません。

実際、AIは、著作権、音楽、映画、著作者性など、OBPとは直接関係のないいくつかの面で、知的財産権に大きな影響を与えています。ここでは、AIがブランドへの脅威の多くの側面でどれほど大きな役割を果たしているのか、そしてブランドを守るためにどう活用できるのかを見ていきましょう。

侵害者はAIをどう使っているのか

残念ながら、ウェブサイトの構築と公開、コーディング、画像の生成といった、AIが得意とする合法的な活動の多くは、オンラインの侵害者のバリューチェーンの中核的な要素です。出品やサイトの作成、画像のコピー、本物のサイトの複製は、人気のあるGPTのほぼすべてにとってお手の物です。

つまり、犯罪者がそうした作業をすべて自分で行わなければならなかったころと比べて、「もぐらたたき」になる可能性ははるかに大きくなっているのです。サイトや出品が削除されるのと同じ速さで、別のプラットフォームで、あるいはタグやキーワードを変えて、再構築されます。

数年前までは、犯罪者に多くの作業を強いるだけで、ブランドを攻撃することを費用対効果の悪いものにできる可能性がありました。その効果は今では大きく薄れています。さらに、AIは画像の加工に非常に長けているため、コンピュータービジョンを使うOBPの技術にとって検知の手がかりになることが多いパッケージや製品の写真も、そうしたシステムをだまそうと簡単に調整できます。偽のレビューやSNSのコメントを模倣品の出品に加えて、より信頼できるように見せることもできます。

AIはまた、SNSのチャネルや関連するインフルエンサーのコンテンツの作成を自動化し、知財保護のチームが追跡して権利を行使するのがはるかに難しいチャットプラットフォームで、ボット主導の販売を行うという、模倣品の販売の新たな形の扉も開いています。OBPのなりすましやオンライン詐欺の側面を考えると、AIの果たす役割はさらに大きくなります。スクレイピングしたデータにもとづいて個別化された完璧な英語のメールを書く能力や、SMSや音声による働きかけを立ち上げる能力は、フィッシング詐欺師の武器を強力にします。先に述べたように、ウェブサイトを複製し、言語を現地化し、訪問者のIPごとにコンテンツを変える能力を加えれば、オンライン詐欺が大幅に増える完璧な条件がそろいます。

だからこそ、ここ遠く離れたニュージーランドでさえ、銀行がフィッシングやそのほかのオンライン詐欺のリスクについて消費者に警告するために、多くの公の取り組みを行っているのです。

権利者とそのサービス提供者は、AIをどう防御に生かせるのか

このことについては、以前こちらでも書きました。要するに、OBPのバリューチェーンの多くの部分は、正しく使えばAIで支援したり置き換えたりできます。

検知:コンピュータービジョンと自然言語処理を使って、最も幅広いプラットフォームをスキャンし、侵害の可能性があるウェブサイトや出品を見つけます。

分析と絞り込み:OBPの提供元にとってこれまでの最大の課題のひとつは、システムが権利行使のできない大量の誤検知(並行輸入品や中古品など)を出してしまうことでした。画像とテキストの認識に機械学習を組み合わせることで、最も効果的なOBPの技術は、人間のアナリストのチームではとうていできないほどすばやく正確に、権利行使ができる項目を特定できます。

権利行使:出品の削除のためにプラットフォームの不正対策チームと協力するには、多くのフォームへの記入が必要です。これは非常に繰り返しの多い作業で自動化に適しており、一部のベンダーはすでに取り組んでいます。

革新的な活用:侵害者がAIを使って消費者をチャットボットとの会話に誘い込んでいるのと同じように、MarqVisionのようなベンダーは、取引の背後にある権利行使が可能な出品やサイトを見つけるために、その会話を追いかけるボットを開発しています。これは典型的な「軍拡競争」の例です。

報告と測定:当然ながら、ブランドはOBPのプロジェクトの状況を知りたがります。どのプラットフォームや地域に最も多くの脅威があるのか、それがどれほどうまく、どれほど速く対処されているのか、そして何が残っているのか。これはベンダーにとって、これまで提供するのが難しく費用のかかるものでした。大手の顧客は、ベンダーの対応力を大きく消費する、非常に個別化された報告やKPIの測定を求めることが多かったからです。

成果にもとづく測定:AIを使って、一部の提供元は今、単なる活動の一覧ではなく、プロジェクトの効果に焦点を当てた、意味のあるカスタマイズされたKPIの測定を算出できるようになっています。これは「露出率(saturation)」や「クリーン率(cleanliness)」と呼ばれています。これによって権利者は、これまでよりはるかに意味のある形で、プロジェクトの進捗を把握できます。

結論

結論は、ブランド保護が失敗したということではなく、それが解決するためにつくられた問題が変わったということです。人工知能は、作成、流通、なりすまし、欺瞞のあらゆるレベルで、侵害の摩擦を取り除きました。それに応えて、保護の技術はより速く、より幅広く、より自動化されてきました。しかし、スピードと規模だけでは、もはやコントロールにはつながりません。

権利行使が永遠に続くとき、成功は一時的なものになります。測定が活動に焦点を当てるとき、成果は不明確になります。保護が後手に回るとき、ブランドは最も重要な瞬間に無防備なままになります。

ここで述べたAIの軍拡競争は現実のものであり、これからも続きます。しかし、ブランドのリーダーにとってより重要な問いは、ツールがどれほど高度かではなく、ブランドが成長するなかで、それが信頼、エクイティ、市場の健全性を意味のある形で守れているかどうかです。そのためには、削除に最適化されたモデルから抜け出し、ガバナンス、可視性、長期的なブランドの健全性に焦点を当てたモデルへと移る必要があります。

軍拡競争を理解することは、過去を説明します。目標を再定義することが、未来を形づくるのです。

執筆者

Charlie Abrahams